子どもの頃、野菜が美味しいなんてほとんど思ったことがなかった。野菜とは、栄養を摂るために頑張って食べるものだった。
野菜が美味しいと感じ始めたのは、有機栽培や自然栽培で作られた野菜を食べるようになってからだ。味付けをほとんどしなくても、生のまま食べても美味しくて驚いた。
最初、有機栽培と自然栽培の違いがわからなかった。自然栽培といっても定義に幅があり、いまだによくわかっていないが、とにかく出来るだけ人が手を加えない方法だと知った。植物本来の力だけで育つのだと。そうしたほうが人間にとっても美味しく育つのだと。このことは自分にとって、驚きだった。それまで、農薬が化学肥料を使わない栽培というと、「マイナスを消す」栽培方法だと思っていたが、人間が手を加えないことで、植物本来の無限のプラスが生まれるのだと気づかされ、感動を覚えた。野菜は育てるものだと思っていたが、自然に育つんだ、人間が管理して育てるよりも、自然に任せておくほうが植物は元気に育つ。そのことには何か大きな意味があると感じた。
有機栽培や自然栽培の野菜を食べているというと、農薬や化学肥料を恐れ過ぎている、あるいは贅沢だ、と思われる方が今でも多いのではないかと思う。自分も最初の頃は少し贅沢だと感じていたが、それに慣れると、元には戻れなくなった。味がいいし、体調もよくなってきたように思う。農薬や化学肥料は、いくら科学的に安全だと言われていても、そういうものを使った作物を自分はなるべく摂取したくないと思っている。
そしていつしか、野菜を買って食べるのは不自然だと感じるようになった。そのことについてはまた改めて書きたいが、そうこうしているうちに、小さな畑を始めた。人は知識でわかったような気になるけれど、自分でやってみないことには何もわからない。何もわからないところからのスタートとなった。(M)