この貸し農園で雑草を生やしている畑は、今のところ、自分たちの区画だけだ。
野菜は整然と種類ごとに並んではおらず、いろんな菜っ葉が雑草もいっしょに混在している。虫よけネットもない。畑と言われて多くの人が思い浮かべる情景とは程遠い姿をしている。荒れ放題にも見えるかもしれない。
雑草に関してはさまざまな意見がある。一般的には、野菜にやるための栄養を奪ってしまう敵だと考えられていて、抜き取ることが推奨されている。
自然農法の本で、雑草は敵ではないという考え方に出会った。雑草は、根を張り巡らせることで土を耕している。野菜を食べるいわゆる「害虫」も、野菜だけを食べているわけではなく、雑草も食べる。雑草は、野菜に「害虫」が集中するのを防いでくれる。一生を終えると、土に還って養分となる。大雑把に言うと、こんな感じだと思う。母にこの話をすると不審がられた。おかしな思想に騙されているのではないかと心配された。
よく観察してみると、真実であることがすぐにわかってきた。雑草は、アスファルトの隙間やちょっと積もった土埃の上にも根を張ることから、わずかな養分で育つことは確かであり、それ以上の養分をとろうと土の中の養分を独り占めし、野菜の成長を阻害するとは考えにくいと思った。伸びすぎて日照を遮るのは困るが、そうでない限りは共存できるのではないかと思った。実際、雑草を抜かないでおいても、野菜はぐんぐん成長している。クモなどのいわゆる「益虫」の隠れ場にもなっていて、大きな食害は見られない。草の根でふかふかに耕されているためか、ミミズもよく現れる。
この写真の様子は、野菜に「害虫」が集中するのを防ぐ、というのを証明しているような場面だと思う。手前に写っているのが雑草のナズナで、後ろに写っているのが東京べか菜というアブラナ科の野菜だ。アブラムシはアブラナ科の野菜につくと聞く。ナズナにはびっしりアブラムシがくっついているが、野菜には皆無だ。
アブラムシを食べるという、てんとう虫の姿もよく見られる。オレンジ色の卵もよくイネ科の葉っぱの裏や野菜にくっついている。多い日で4-5匹は見かけている。
雑草を抜くと、土の中の小動物や微生物のすみかを荒らすことになり、生態系の微妙なバランスが崩れてしまう、というのも本で読んだ。区画と接する通路の雑草が抜かれていたことがあった。よく見てみると、そのすぐそばのホトケノザが黄色くなるなど、少し様子がおかしくなっていて、菌などのバランスが崩れてしまったのかもしれないと思った。雑草を抜くことは、メリットよりもデメリットのほうが大きいと実感した。
こんな小さな畑でも、生態系のバランスができつつある。最大限を食べてやろうと思うのではなく、そのなかの恵みをいただく、という考えを忘れないようにしたいと思う。